成長マインドセットは組織づくりのリトマス紙になる。 規格外ベンチャー、FiNCの組織戦略とは。

「成長マインドセット」を取り入れることで、組織・個人はどう変わるのか。今回は、数十億円の資金調達や元みずほ銀行常務、ゴールドマンサックス本部長の参画と、規格外の成長を遂げるヘルステックベンチャー株式会社FiNCの代表取締役社長CEO、溝口勇児さんにお話を伺います。

 

溝口 勇児
高校在学中からトレーナーとして活動。今日までプロ野球選手やプロバスケットボール選手、芸能人等、延べ数百人を超えるトップアスリート及び著名人のカラダ作りに携わる。トレーナーとしてのみならず、業界最年少コンサルタントとして、数多の新規事業の立ち上げに携わりまた数々の業績不振企業の再建を担う。再建を託された企業に関しては、その全てを過去最高業績へと導く。2012年4月にFiNCを創業。一般社団法人アンチエイジング学会理事、日経ビジネス「若手社長が選ぶベスト社長」に選出、「ニッポンの明日を創る30人」に選出。


ダイバーシティ豊かな組織の共通言語に

ー成長マインドセットを組織に取り入れた背景を教えて下さい。

グローバルに新しい価値を生み出す組織を作るため、組織の共通言語の一つとして導入しています。

元々、FiNCでは創業期からダイバーシティに富んだ組織づくりを意識していました。旧態依然とした事業を手がけるのであれば問題ないのですが、本質的に新しい事業を創造しようとした場合、事業の複雑性は高くなり、ダイバーシティ豊かな組織を作ることは必要条件になると考えています。

実際に、社内は国籍も年齢もバラバラ、フィットネスのトレーナーからデータサイエンティストまで、ベンチャーの中では非常に稀有なダイバーシティだと思います。

私たちが組織づくりで理想としているのは例えると「手」のような組織です。「手のひら」の部分が組織として共通した部分で、その先の「指」の部分は個性があるという状態です。手のひらだけだと、宗教に近くて一色に染まった組織となり、それはダイバーシティには程遠い。一方で、手のひらがない指だけでは、それぞれが自分の価値観を主張するだけで組織にならない、烏合の衆です。

新しい人が入ったり組織のフェーズが変わったりすると、手のひらのサイズが変わるんです。手のひらが小さくなってカオスになる時もあれば、指先のダイバーシティが欠如することもある。そのバランスを見ながら組織づくりをしています。

ー成長マインドセットが担うのは「手のひら」づくりということですね。

はい。特に、前職で活躍・成功してきた人ほど自分のパラダイム(固定概念)を持っています。しかし、各々がその前提で議論をして譲らなければ相入れることはありません。組織は敬意と疑念の双方が成り立たなければいけないので、共通言語作りは非常に重要です。

ー具体的にはどのように活用されているのでしょう。

成長マインドセットを全社員に、研修形式で複数回に渡って導入しています。一回やって終わりという種類の取り組みではないので、その研修での気づきを風化させないための仕組みや評価制度などと合わせて運用しています。

特に、アイスバーグ理論は、本当に大切なものを気づかせてくれる考え方として社内で大事にしています。多くの人がスキルに目が行きがちな中で、本当に大切なのは根底の哲学というのはとても重要な話です。

例えば、FiNCのメンバーでも意思決定の際にスキルがなくて悩んでいるという声が上がるのですが、僕から見ると、諦めない・逃げ出さない・投げ出さないという素養がリーダーとして登用する上で重要だったりします。仮に、英語もプレゼンテーションもプログラミングもまだ発展途上だとしても、それを磨くための努力や、自分に任されたものに応えようという姿勢は絶対に覆しませんという人であれば、確実に成長します。

若かったり、リーダー経験がなかったりする人などは、そういうことを自分で気づくのが難しいこともあります。そんな時に、アイスバーグを通じて、成果を生み出す構造や、根底の哲学の重要性を認識できるのはとても価値があると思います。

 

組織づくりの教科書・リトマス紙として

ー読み手の経験や立場によって、価値が異なるということですね。

そうですね、成長マインドセットは理解度によってレベルが測れる部分もあり、組織づくりの教科書としてリトマス試験紙のような役割を果たすと思います。

残念ながら、当事者意識や責任感という言葉は、持ち合わせていない人ほどそれを学ぶ場を作っても刺さらないことが多いです。反対に、その要素が高い人ほど、こういった研修や書籍からより吸収していきます。私自身、20歳の時から読み続けているビジネス書があるのですが、当時と比べると今の方が吸収量が高いと感じます。吸収する準備やベースが少しずつ整ってきて、吸収できる量が増えているのだと思います。

理解の量が深いほど良い組織を作れる可能性が高いと思うので、その数を増やしていけるよう、FiNCでは全社員でこの考え方を共有しています。

ー経験や立場を問わず、 成長に一歩踏み出すために、「意識・哲学」の部分ではどんなことが重要になるでしょう。

個人的には、「勇気」が大切だと思います。

勇気とは、私の定義では、恐れを抱かないことではなく、恐れを抱いても行動する度胸があることだと考えています。身近な行動に落とし込むと、不言実行でなく有言実行にすることが重要です。自分の目標や課題を言語化してシェアすることは非常に重要です。

不言実行の場合、失敗しても人知れず傷つくことなく明日を迎える。人間はそんなに強くないので、そう簡単に自分に勝てないんです。私個人の例として、24歳から27歳まで3年間1日も休まずブログを書いていたことがあります。毎日書くのは大変でしたし、小さなことでも本当にしんどかったのですが、周りに書くことを公言していたからやめられなかったんです。

公言して、周りに期待する人が増えた。それがあって初めて己に勝てたんですよね。自分の力で勝ったわけではないんです。

そんな風に、目標や夢、課題などに対して、勇気を振り絞って周りにシェアしてみることが重要だと思います。もしかしたら実現できない可能性や、敗者になる可能性がある。でも、その恐れを克服してちゃんとみんなにシェアする、公言することが当事者意識や責任感、行動に繋がるんだと思います。

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