「成長マインドセット」を取り入れることで、組織・個人はどう変わるのか。急成長スタートアップにフォーカスしてお届けする本連載、第4弾は、スタートアップの創業期から上場までをプレイヤーとして牽引し、エンジェルとしても多数のスタートアップに参画する、0→100フェーズの専門家、山口豪志さんにお話を伺います。
山口豪志
2006年からクックパッド株式会社で営業やマーケティング、2012年からランサーズ株式会社で事業開発や広告企画などを担当。現在は株式会社54代表取締役社長、株式会社プロトスター代表取締役COO、株式会社スタディスト アドバイザー、株式会社情報工場メディア開発部プロデューサー、株式会社デフタキャピタル アクセラレーター・横浜ジェネラルマネージャを務める。個人投資家として、『本と旅と友達が人生を豊かにする』をモットーに事業づくりを支援する。
相手への想像力を培うきっかけに
ー0→100フェーズの専門家の山口さんから見て、『成長マインドセット』はスタートアップにどんな価値があるでしょう?
これまで言語化できていなかった人の悩みを言語化した上で構造を捉え、解決策を示しているという画期的なことだと思います。そういう意味では、スタートアップに限らず、いち社会人としてほぼ全ての人にとって価値がある内容だと思います。
その中で、私自身のスタートアップでの経験と照らし合わせてみると、「マネジメント層」と「プレイヤー」の両方にとって異なる気づきがある内容だったのが印象的です。
ーなるほど。マネジメント視点ではどんなところが印象的でしたか?
「悩みブレーキ」の話が印象的でしたね。マネジメントする立場になると、メンバーが思った通りの行動をしないことで悩むことがあります。行動の理由がわからなくて違和感があるんです。そんな時、悩みブレーキの存在を知っていれば、相手の行動に移せなくなっている前提に想いを馳せることができます。「こいつ、今まさに悩みブレーキを踏んでいるな」と思うと、その行動に対して理解ができるんですよね。
例えば、恋愛がうまくいかないとか、家族の事情で悩んでいるとか、ブレーキを踏みながら走り続けようとしている人って、結構多いんです。ただ、上司としては、どういう原因でそうなっているのか、この構造を理解していないと全く分からないし、ケアも難しい。
実際に前職では、周りのメンバーが悩んでるな、しんどそうだな、と感じていたときに、どうコミュニケーションを取れば良いか分からず、会社として見て見ぬふりをして放置してしまったことで、退職に繋がってしまったケースがあります。最初は小さなズレだったのが、だんだん大きくなっていき、折り合いがつけられなくなったんです。もっと早く想像力を持って相手の悩みブレーキに対して想いを馳せられていたら、まだ一緒に働けていたかもしれないなと思います。
ブレーキの存在を知っていることで、マネジメントする側は相手の立場や状況を想像する方法を得ることができると思いました。
弱点を自覚するからできる、セルフマネジメント
ー反対に、プレーヤーの視点ではどんなところが価値になるでしょう?
セルフマネジメントにもすごく役立つなと思いました。特に、みんな自分の中に「大きな子供」を飼っているという話が面白かったです。人間の本質をついていると感じましたね。誰にでもウィークポイントがあるけれど、それを自覚できないと未成熟な自分を見ないようにしたり、うまく自分と折り合いをつけられなかったりします。
それが、大きな子供の存在を認識することで、そんな自分を少しずつ許容して、うまく付き合っていこうと考えられるのは大きいと思います。誰にでも子供の部分があると思えば、安心できますしね。自分の弱点を自覚することは、セルフマネジメントをする上で非常に重要です。
一人ひとりがセルフマネジメントできると、自分が組織にどう評価され、どう貢献できるか考えられるようになるので、必然的に組織もよくなっていくんですよね。
ー最後に、組織を作っていく中で、成長マインドセットをどんな風に活用するのが良いでしょう?
チームの共通言語とするのが一番有効だと思います。共通言語があると、お互い嫌味なく指摘しやすくなったり、悩みを言いやすくなりますよね。一人ひとりに、コンピューターのOSのようにこの考え方を浸透させることで、自分や社内のメンバーと向き合っていける強いチーム作りに活かせるのではないかと思います。