「成長マインドセット」を取り入れることで、組織・個人はどう変わるのか。急成長スタートアップにフォーカスしてお届けする本連載、第二弾は、理系人材のダイレクトリクルーティングサービス「LabBase」を運営し、創業1年半でインターンや業務委託を含め100人の組織へと急成長を遂げる株式会社POL代表取締役CEOの加茂 倫明さんにお話を伺います。
加茂 倫明
東京大学工学部3年生休学中。高校時代から起業したいと考え始め、その後ベンチャー数社で長期インターンを経験。2015年9月からは半年間休学してシンガポールに渡り、REAPRAグループにてプロダクトマネージャーとしてオンラインダイエットサービスの立ち上げを行う。2016年9月に株式会社POLを設立。研究関連市場をテクノロジーで革新することを目指し、現在はLabBaseという理系人材のダイレクトリクルーティングサービスを運営している。
自分の価値観を押し付けていたのかもしれない
ー「成長マインドセット」を取り入れた背景を教えてください。
会社を設立して1年、 正社員が2名という創業初期に、社員・インターン生全員で「成長マインドセット」の研修を受けました。
ー加茂さんはどの部分が印象に残りましたか?
アイスバーグの理論が特に印象に残りました。僕自身、成長意欲が強い方だと思っていたのですが、「成長とは何か」を分かっていなかったんです。そのせいで、意識的に成長を促進できない。特に、アイスバーグの要素で分解した時に、想いはありながら行動に落ちてないないものがあり、それは伸びないよな、と納得しましたね。
例えば、僕の中で「他者愛」の意識はとても大事にしていたつもりが、具体的な振る舞いに落ちていませんでした。そのことに気づいてからは、すごい些細なんですが、会議でなるべくユーモアを交えたり、頭ごなしに誰かの発言を遮ったりしないように、振る舞いを変えるようになりました。
ーチームメンバーとの関わり方が変わったんですね。
はい。もっと言うと、自分は周りのメンバーに自分の価値観を押し付けていたのかもしれないと反省しましたね。成長を促進するアクセルの中に「なんのために働くのか」というテーマがあると思うんですが、僕は「仲間の成長、成功・お客様の幸せ」「やりがい・自己成長」の矢印が大きく、「自分の昇給・昇格」や「仲間の昇級・昇格」への動機はほとんどありませんでした。
一方で、他のメンバーが同じ図を描くと、形は色々と分かれます。そこで、「自分はお金がどうでもいいから」と、周りにも同じ価値観を押し付けていたことを気づいたんです。ちょうどインターン生の給与を決める議論が社内であったのですが、何が周りのメンバーのモチベーションなのかという点について、あまり気が回っていませんでした。「他者愛」と言いながら、自分と同じモチベーションの人しか幸せにできていなかったんです。
この研修を受けた後からは、一人一人違うモチベーションに個別最適化できるように意見の聞き方を工夫し、実際に給与の額も変わりました。自分一人でなく、メンバーと一緒に受けたことで、共通言語があった分、お金の話でも気持ちよく議論することができました。
自責が会社のカルチャーに
ー一緒に参加されたメンバーにも変化はありましたか?
はい、特にブレーキのパートにある「当事者意識100%」の話が刺さったメンバーが多かったように思います。実は、もともと退職を検討していたメンバーがいたんです。研修直前の1on1で、先ほどの給与の話や環境への違和感など、「何か違うかも」という感覚を抱いているという話をもらいました。
ところが、一緒に研修に参加した後から、すごくすっきりした表情に変わったんです。明らかに主語が「会社」になり、これまで違和感を感じていた課題に、取り組む主体となってくれました。
正直、創業期のスタートアップということもあり、細かい部分でメンバーにストレスをかけてしまっている自覚はあります。ただ、メンバーが会社に対して当事者意識をもつことで、「課題に対して一緒にやっていこう」という気持ちができたのは本当に大きいです。
今、インターン生や業務委託の方などを含めると約100人まで規模が大きくなったのですが、当事者意識を強く持ったメンバーが多いことが、組織成長の核になっていると思います。
ー今後、経営や組織づくりに生かしていきたいことなどがあれば教えてください。
基本的には、これからも「成長マインドセット」の考え方を組織に浸透させていきたいなと思います。例えば、うちのslackでは「それ他責」というスタンプがあって、冗談半分ですが、社内の共通言語として使われています。「電車が止まってしまったので遅刻します。」「それ他責!もっと早く出よう」みたいな。(笑)このように、他の要素についても、会社の共通言語として根付かせていけたらと考えています。